tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

賃上げと消費者物価の関係の正確な理解を

2016年11月17日 15時16分32秒 | 経済
賃上げと消費者物価の関係の正確な理解を
 前回の最後の所でも一寸触れた問題ですが、賃上げと消費者物価の関係については様々な議論がるので、何とか正確な理解をしていただけたらと思い、書くことにしました。

 2017春闘についても、また安倍総理が「働き方改革実現会議」で労使代表に昨年並みの賃上げを要請し、特にベースアップ(定期昇給を超える賃上げ分)の4年連続を要請したようです。それだけならまだいいとして、さらに加えて、来春には消費者物価の上昇も「期待」されるので、賃上げに当たっては期待物価上昇率も勘案してほしいと発言したと報道されています。
 今の政府も日銀も、 2パーセントインフレがいいと単純に信じているようですからこうした発言が出てくるのかもしれませんが、矢張りこれはインフレに対する基本的な理解不足による発言というべきでしょう。

 今の経済社会では、 インフレの主要な原因は2つです。1つは海外物価が上がって起きる輸入インフレ、2つは賃金コストインフレです。(貨幣数量説は通用しません*注)

 このうち輸入インフレは国内経済政策では対抗できません。仕入れ先が値上げ通告をしてきたようなもので、その分は我社も値上げする(輸入インフレ)しかありません。値上げすれば、結局消費者が負担することになります。輸入小麦が上がったからパンもうどんも値段が上がったが生姜ないなというわけです。

 そこで消費者・労働組合が我慢しないで、物価が上った分を賃上げ取り返そうと賃上げをしますと、その分は企業にとって賃金コストアップになるので、企業はまた値上げをすることになり「輸入インフレ」は「賃金コストインフレ」になります。

 今度は、その「賃金コストインフレ」を賃上げでカバーしようという事になり、賃金上昇はエスカレートし「賃金と物価の追いかけっこ」になります。対抗できないものに対応しようとしても不可能です。

 かつてはどこの国でも、こうして「賃金物価のスパイラル上昇」が起きて国際競争力が弱まって不況やスタグフレーションに沈没するというのが現実でした。
 しかし今は先進国ではインフレが起きません。これは、賃金の安い途上国から安い物が入って来るので、インフレにしたら、高い国産品は売れなくなり勤めている企業がつぶれて挙句は失業ですから労働組合も無理な賃上げをしないからです。

 これが今、先進国ではインフレが起きず、インフレの起きているのは賃金の割安の後発国だけ、という実態の原因です。

 もし、安倍さんの言う事に労使が賛成して、物価上昇分も賃上げでカバーするような賃上げをしたら、今の世の中どうなるか是非考えてみてください。

 さらにこれには為替レートか絡んできます。この問題は次回にします。

注)紙幣を沢山刷って市中のお金をジャブジャブにすれば物価は上がるという説、物価はモノとカネの量的関係で決まるからお金の量を2倍にすれば物価は2倍なるとする。

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